ランス大聖堂

ランス大聖堂(Cathédrale Notre-Dame à Reims)

正式には「ランスのノートルダム大聖堂」。「ノートルダム」(Notre-Dame)は「我々の貴婦人」との意味で、聖母マリアを指します。2019年4月に火災を起こし、再建中の「パリのノートルダム大聖堂」をはじめフランスには数多くのノートルダム聖堂があります。フランク王国の始祖クローヴィスがキリスト教に改宗する際、ランス司教から洗礼を受けた故事に倣い、フランク王国が分裂した後のフランス王が歴代、ランス大聖堂にて戴冠式を行った経緯があります。

ランス(Reims)はパリの北東140㌔に位置するシャンパーニュ地方の中心都市で、シャンパンの本場でもあります。パリの東駅からTGVで1時間弱で着きます。人口は20万人足らずですが、なかなかお洒落で、賑やかな街です。ランス駅からは大聖堂まで歩いても15分程度、そこまでにレストランやカフェが軒を連ねる通りや、ブランド品を扱うお洒落なブティックなどが並ぶ通りが縦横に走っています。

ランス大聖堂は20世紀初頭に大修復を行っており、隣接して修復前の大聖堂にあった彫刻や宝物を展示するトー宮殿(Palais du Tau)があります。そこから1㌔㍍先には、クローヴィスに洗礼を授けた司教の遺体が安置されているサン・レミ・バジリカ聖堂(Basilique St-Remi)があり、これらが一体となって1991年にユネスコの世界遺産に登録されています。

ランスの大聖堂は13世紀に建てられたゴチック様式で、左右に2つの塔が建ち、外壁に施された数々の彫刻が美しい。正面広場にはジャンヌ・ダルクの騎馬像があります。

                ランス大聖堂の外観      

               ジャンヌ・ダルクの騎馬像


ゴチック様式の特色は、大きな窓のそこここにきらびやかなステンドグラスがはめ込まれているところにあります。ゴチック様式より以前にヨーロッパを席巻した重厚なロマネスク様式は天井が重く、それを分厚い壁で支えるために小さな窓しか作れませんでした。それが尖塔式の屋根にするなど技術の進歩によって、窓を大きくすることが可能となったのです。

ステンドグラスには聖書の物語などが描かれ、ランス大聖堂もその例に漏れません。窓に射してくる陽の光は信者たちの幻想を掻き立ててきたことでしょう。中央奥の小さな祭室には、大修復に当たってマルク・シャガールが寄進したステンドグラスがあります。シャガールが好んで用いた青色はシャガール・ブルーと言われ、色の深みとともに、幻想的な味わいがあると言います。そこに差し込む光との調和は、他のステンドグラスにもまして心を和ませるものです。

          ランス大聖堂のステンドグラス                 


隣接のトー宮殿には、フランス王の戴冠式の際に使用された装飾品もふんだんに展示されています。必見は、フランク王国を現在のドイツ、フランス、イタリアにまで拡大させたシャルルマーニュ(カール大帝)の護符(お守り)や、フランス王が聖別式で使った聖杯など。ちなみに、「Tau」はギリシャ語の「T」(タウ)で、建物がT字のレイアウトになっていることから名づけられました。

               シャルルマーニュの護符

フランス事始め

政治から文化まで世界のモードを牽引してきたフランスを多面的に論じ、知識・理解を深めてもらうことで、我々の人生や社会を豊かにする一助とする。カテゴリーを「地理・社会」「観光」「料理」「ワイン」「歴史」「生活」「フランス語」と幅広く分類。横浜のフランス語教室に長年通う有志で執筆を手掛ける。徐々に記事を増やしていくとともに、カテゴリーも広げていく。フランス旅行に役立つ情報もふんだんに盛り込む。

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